月: 2014年1月

国語の大切さと難しさ(part3)

国語の大切さについて、前回は「読み」についてお話ししました。

今回は「正解を得る」方法です。


少し前に、作家のよしもとばななさんが何かに書かれていたことです。

自分の作品が入試問題に使われていたので、解いてみたところ満点がとれなかった。

自分の書いた文章なのに不思議だという趣旨の文章でした。
 

入試問題は、作者ですら間違うほど難しいと言いたいわけではありません。

素材文は、あくまでも作問者にとっては素材です。

作問者が自分なりの理解や切り口で問題を作りますから、作者がこう書いたつもりでも作問者が異なる理解をしていることもあります。

作問者が間違っているわけでもありません。

作問者がその文章から触発されて、作者の意図以上の理解をしたのかもしれません。

そうした場合は、作者だからこそ間違えたと考える方が納得できます。
 

問題を解くときは、作者と会話をするのではなくて、「作問者と会話」してください。

作問者との会話する方法

その一

問題文は、しっかりと読みましょう。

「傍線1につて、太郎君が感じたことについて、その原因となったことを次のアからエから選びなさい。」

「傍線1につて、太郎君が感じたことについて、それがわかる場所を○○字で抜き出しなさい。」

という問題に対して、多くの子ども達は「傍線1につて、太郎君が感じたこと」までしか読んでいないのです。

目は、最後まで追っているのですが、意味が意識されているのは前半だけなのです。

そのために、「太郎君は何を感じたんだろう?」と考え始めてしまうのです。
 

その二

質問の意図に沿って考える。

「西欧的なモニュメントと、日本においてのモニュメントはどのように異なると言っていますか。モニュメントの素材の違いを考慮して答えなさい。」

という問いについては、「モニュメントの素材の違いを考慮して」が大切なヒントになります。

「どのように異なる・・」という質問は漠然としていて答えようがありませんね。

ところが、「モニュメントの素材の違いを考慮して」で、西欧と日本で使われる素材を書かないといけないと判断できます。

そして、素材の性質の違いがモニュメントの存在意義の差異を生み出しているんだ、ということを書けば良いことがわかります。

作問者は、「モニュメントの素材が持っている性質が異なるから、モニュメントそのものの意味合いが異なっているんだ」と、

理解したからこそこの問題を作ったわけですから。
 

「うちの子は本好きでいっぱい読んでいるのに点数がとれない」というご相談も多いのですが、

その多くは本文の内容だけにこだわりすぎていることが多いのです。

「僕はこう感じた」「僕はこう思う」に、こだわりすぎているとも言えます。

小学校の国語指導は、「あなたはどう感じましたか?」「あなたはどう思いましたか?」が中心です。

「問題を作った人はどう思っていますか?」を尋ねられることはありません。

受験勉強における国語と小学校の国語では、視点の転換が必要なのです。

そして、設問に対して、そのまま素直に答えるというシンプルな思考や方法が大切になってきます。
 

その訓練にも、実際の入試問題を上手に利用してください。

「こんな問いを作ったということは、問題を作った人はこの部分でどのように感じたのかな?」という声掛けも有効です。

国語の大切さと難しさ(part2)

「幸福感に潜む不幸」や「悲しさの中に感じる安堵感」や「嫌悪している相手に対する共感」・・・など、

人の心の重層構造に思いをはせないと理解できない物語文や、

「美と美の状態」や「西欧的なものと日本的なもの」というようなテーマも扱われている説明文が、読解問題の難しさだと書きました。

子どもが、日常生活の中では考えたり感じたりするはずのないこと、一種の教養としての思考が要求されています。

このような、テーマを扱う問題を解く上で、2つの要素に分けてお話ししたいと思います。

1つ目は、「読み」です。

2つ目は、「正解を得る」です。

〇読みについて

入試に採用されている素材文は、大人が読んでも感動がわき起こったり、新たな知見を得たりできる優れた文章がほとんどです。

そして、その長文の選択は、その学校の国語の先生方に任されているのが普通です。

学校の国語の先生達が、これまでの読書体験の中で、これはと思う文章を選ばれることになります。

(その中学校や高校での夏休みの読書課題から、学校特有(担当教師特有)の特徴が見えたりします。)

そうなると、どうしても日本近代文学から現代までの主要な系譜の中からの選択になりがちです。

私の貧弱な読書体験から話しをさせていただくと、

漱石から始まり江藤淳につながる多くの作家や評論家によって書かれた「西欧的なものと日本的なもの」

の相克が1つの大きなテーマになっているように感じます。

また、母性と父性も西欧的なものと日本的なものに絡めてテーマになります。
 

このようなお話をすると、「それでは日本近代文学を読ませなくっちゃ!」と思われる方が多いと思いますが、

ちょっとお待ちください。
 

もう一つ、お話をしておきたいと思います。

4~5年前から急に関東圏の国語の素材文が難しくなったことを前回お知らせしました。

そして、いろいろ市販されている国語の問題集は、過去の入試問題を参考に作られることが多いのですが、

それは4~10年前の出題問題からの選択され改題されているのが普通です。

そのために、受験問題集に採用されている長文のレベルが現在の問題レベルに合わないことになります。

 

塾のテキストも同様です。

テキストの問題は解けるのに、塾の総合テストでは点数がとれない子どもが多いのです。

易しい長文で練習しているにもかかわらず、難しい素材文が出題されているのですから当然と言えば当然です。

塾のテキストが易しく、次に難しいのがテストの文章、それ以上に難しいのが入試問題となっています。

これが、国語の成績を上げたくて、テキストを一生懸命勉強しても効果が無い原因です。


多くの塾での保護者会では、「入試の過去問は6年生の10月からで充分だ」と話されているようですが、

国語に関しては1学期から始めて欲しいのです。

志望校の過去問である必要はありません。最近出題された志望校と同レベルの長文のレベルに慣れてもらうためです。


塾の国語カリキュラムは、「説明文」→「物語文」→「随筆」→「詩」・・というようになっています。

カリキュラムに合わせて、入試問題からピックアップして力試しをしておいて欲しいのです。

制限時間にこだわる必要はありません。じっくりと時間をとって読ませてあげてください。


そこで、読み方です。

長文を読み込むことが大切なのです。

読み込むとは、文章のつながり、段落のつながり、語句の意味を正確に捉える、指示語の理解、接続後の理解・・・。

一つ一つの文章をしっかりと読んで内容を消化していくことが「読み込み」です。

決して流し読みではないのです。

「日本近代文学をたくさん読ませることはちょっとお待ちください」と言ったのは、子ども任せで読ませると、「流し読み」になってしまうからです。


はじめは、

「その、「しかし」は、何に対してなの?」とか、

「「とてもそう思えなかった」という「そう」とはどんなこと?」とか、

「そこの「モニュメント」って何に対してのモニュメントなの?」

というような質問が大切です。

子どもは質問に答えるために、その語句の前後を読み直し、言葉の関係を見つけ、自分の過去の経験や心の動きを想像したりします。

これが、難問を解くための読み方です。


国語家庭教師の力量は、この質問力で決まります。

子どもの頭をフル回転させる質問を連発できるかなのです。


国語の読解にもテクニックは必要です。

ところが、テクニックだけでは深いテーマを扱った文章には太刀打ちできません。

的確に読み取ることが必要になります。

ですから、国語の力量を高めるにはどうしても期間が必要です。

子どもの状況によっては半年で大丈夫な子もいれば、2年必要な子もいます。

早めの対策をお願いしておきます。

次回は、長文問題を解く際に気をつけていただきたいことを書いていきます。

国語の大切さと難しさ(part1)

「算数を上げるには、国語を勉強しましょう。」とTBSの「100秒博士アカデミー」で話しをさせていただきました。

「てにをは」の使い方の大切さについて、いくつかの教育雑誌の取材がありましたから、ある程度の反響はあったようです。


今回は、算数における国語ではなくて、国語そのもののお話です。

関西に比べて関東の国語の問題は難しい、と言われます。

確かに関東の方が格段に難しいのです。

算数は西高東低ですが、国語は逆なのです。

 

また、4年ほど前に国語の問題は一段難しくなりました。

今回は、この”国語の難しさ”のお話です。

国語の問題は、「正誤選択問題」「記述問題」に分かれます。

そして、記述問題は、「書き抜き記述」「条件記述」「自由記述」に分かれます。

これは、関西も関東も同じです。もっと範囲を広げて、高校受験や大学受験でも同じなのです。

 

異なるのは、長文(素材文)のレベルです。

あるとき、塾の模試に、登場人物の中に義父が出てくる問題がありました。

その模試の平均点はがくんと下がりました。

子どもは、自分が経験していないことにはからっきし弱いのが普通です。

と言って何から何まで経験させてあげることは不可能です。

だって、お母さんが離婚して再婚したから義父が出来たわけですから、子どもに義父の存在を経験させてあげるには

お母さんは離婚しなければならないことになってしまいます。
 

それ以外にも、「幸福感に潜む不幸」や「悲しさの中に感じる安堵感」や「嫌悪している相手に対する共感」・・・。

人の心の重層構造に思いをはせないと理解できない物語文が多いのも、難しい理由です。
 

説明文では、「美と美の状態」や「西欧的なものと日本的なもの」というようなテーマも扱われています。

日常生活の中では考えたり感じたりするはずのないこと、一種の教養としての思考が要求されています。

実際に出題された問題の出典の一部を挙げてみます。

友だち幻想 菅野仁/著

科学と科学者のはなし 寺田寅彦/著

思考の整理学 外山滋比古/著

日本人とすまい 上田篤/著

 生物学的文明論 本川達雄/著

日本のデザイン 原研哉/著

大人が読んでも読み応えのあるものばかりです。

次回は、このような難しい素材文に強くなる方法について書いていきたいと思います。

▼2022年11月18日(金)

「日経DUAL」が主催するオンラインセミナー「<志望校・併願校の決め方 校風、偏差値と問題傾向から決める! 合格するための受験校の選び方」にて、講師を担当させていただきました。

▼2022年10月28日(金)

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▼2022年9月30日(金)

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▼2022年9月10日(木)

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▼2022年8月5日(金)

「日経DUAL」が主催するオンラインセミナー「中学受験の「基本のキ!」令和4年度版 最新の中高一貫校の選び方から受験の傾向まで全部分かる!」にて、講師を担当させていただきました。

▼2022年7月21日(木)

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▼2022年7月8日(金)

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▼2022年6月24日(金)

「日経DUAL」が主催するオンラインセミナー「中学受験を迷っている!?保護者必見セミナー 未就学・小学低学年から、親が知っておきたい「中学受験」の実像」にて、講師を担当させていただきました。

▼2022年5月27日(金)

「日経DUAL」が主催するオンラインセミナー「自分で学習する子の育て方  中学受験、高校受験でも生きてくる「子が自走する学習法」を伝授します」にて、講師を担当させていただきました。

▼2022年5月26日(木)

「中学受験情報局 かしこい塾の使い方」が主催するオンラインセミナー「6年夏休みに成績を大きく伸ばす6月・7月の過ごし方」にて、講師を担当させていただきました。。

▼2022年4月22日(金)

「日経DUAL」が主催するオンラインセミナー「家庭学習のやり方を指南  塾に通っているだけで、安心していませんか?」にて、講師を担当させていただきました。

▼2022年4月14日(木)

「中学受験情報局 かしこい塾の使い方」が主催するオンラインセミナー「夏休みまでに偏差値5UP 6年生GWで成績を上げる10のポイント」にて、講師を担当させていただきました。。

▼2022年3月18日(金)

「「日経DUAL」が主催するオンラインセミナー「頭のいい子が育つ! 学習環境のつくり方」にて、講師を担当させていただきました。

▼2022年2月25日(金)

「日経DUAL」が主催するオンラインセミナー「中学受験セミナーわが子の合格に必要な学習は?」にて、講師を担当させていただきました。

▼2021年12月17日(金)

「日経DUAL」が主催するオンラインセミナー「中学受験・合格する家庭のつくり方セミナー」にて、講師を担当させていただきました。

▼2021年11月19日(金)

「日経DUAL」が主催するオンラインセミナー「中学受験合格つかむ「過去問」使い方セミナー」にて、講師を担当させていただきました。

▼2021年10月22日(金)

「日経DUAL」が主催するオンラインセミナー「中学受験合格つかむ「過去問」使い方セミナー」にて、講師を担当させていただきました。

▼2021年9月24日(金)

「日経DUAL」が主催するオンラインセミナー「苦手克服し成績を上げるコツ」にて、講師を担当させていただきました。

▼2021年7月16日(金)

「日経DUAL」が主催するオンラインセミナー「7/16入試にも役立つ夏休み自由研究対策セミナー」にて、講師を担当させていただきました。

▼2021年6月26日(土)

新渡戸文化学園が主催するオンラインセミナー「中学受験へ向かうみなさまへ 中学受験って何? 大切なことは何?」をにて、講師を担当させていただきました。

▼2021年6月25日(金)

「日経DUAL」が主催するオンラインセミナー「親が知りたい中学受験のキホン」をにて、講師を担当させていただきました。

▼2020年10月14日(水)

「日経DUAL」が主催するオンラインセミナー「中学受験セミナー第2弾!過去問を活⽤する家庭学習のコツ」をにて、講師を担当させていただきました。にて、講師を担当させていただきました。

▼2020年9月29日(火)

「日経DUAL」が主催するオンラインセミナー「中学受験 コロナで変わる!併願校の選び⽅/合格を導くための模試の問題⽤紙・答案⽤紙活⽤法」にて、講師を担当させていただきました。

▼2020年6月12日(金)

「中学受験情報局 かしこい塾の使い方」が主催するオンラインセミナー「ウィズコロナ時代の中学受験を成功させる夏の過ごし方」にて、講師を担当させていただきました。

▼2020年6月6日(土)

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▼2020年2月19日(水)

「中学受験情報局 かしこい塾の使い方」が主催するセミナー「2020年首都圏中学受験 入試分析セミナー」にて、講師を担当させていただきました。

▼2020年2 月6日(木)

「中学受験情報局 かしこい塾の使い方」が主催するセミナー「2020年関西中学受験 入試分析セミナー」にて、講師を担当させていただきました。

▼2019年10 月11日(金)

淑徳与野幼稚園が主催する講演会「父母講座 我が子への根拠の無い信頼の大切さ」にて、講師を担当させていただきました。

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